
永井が目の前に駆け寄ってきて、ひざまずいた。大きく見開いた眼差しが俺らの記憶に刻み込まれていく。
押し寄せる波のように打ち込まれ、アルゼンチン仕込みの野性に圧倒された。もはや無失点ドロー以外に道はない、だが、いつまで持ちこたえられるか。
そんな弱気の虫を突風のように吹き払った永井のゴール。そしてその直後にも達也がヘッドで俺らの目の前に突き刺した。
2-0?
俄かには信じられないスコアが掲げられる。連続得点後のいい流れはすぐに止められ、逆にPKを取られるも、山岸が足に当てて事なきを得る。我に帰ると残り時間は30分。こうなったらやるしかねぇ。
これぞまさしく「大脱走」。
相変わらずの徹底的なマンマーク。
ブーイング、ブーイング、ブーイング、ブーイング、ブーイング。
何かの拍子に足を痛めた永井に変えて、千島を投入。リーグ初出場というシナリオ通りにイエローを食らうと、堰を切ったかのように次々とカードを貰う。ただただ体を投げ出してブロックを試みる守備陣。その体に当たってくれと念じる俺ら。
目の前に繰り広げられているのは、もはや守備練習としか解釈しようがない光景。失敗が許されない守備練習・・・。
それでも長いとは思わなかった。俺も今までにないくらい集中していたのだろう。気がついたらラスト5分。
やっとこいつらに一泡吹かせてやれる。渾身の力を込めたプライドオブ浦和。
事故みたいなFKで1点返されたものの、ついにタイムアップ。
事前の打ち合わせもなく、いつもの駒場のように階段に集結した俺らもがっちりと抱擁した。
「長く追っかけてると、こういうこともあるもんだ」
浦和レッズ、カンペオン。
次の柏戦のもつ意味がさらに重くなったことはわかっているが、とにかく次の試合まで俺らが王様だ。
くそったれ磐田、ざまーみろ。