1998年8月アーカイブ

福田が帰ってくる。アップ開始前、平塚の係員がなんとスタメン発表の前に背番号だけ掲示してしまったので、何とも味気ない復活の知らせだった。この日、福田正博が遠征に帯同したという情報を聞き付けてアウェー側スタンドは赤一色。早々に”GetGoal”コールが炸裂し、なかなか鳴りやまない。いつもより相当早い声出しスタートでいやがおうにも、ボルテージは高まっていく。

浦和は福田を1トップ気味に据えて、1段下に福永を自由に走らせる形でゴールを伺う。福田には常に相手DFが1枚ついており、そこへボールを預けようとしても、福田がなかなか自由にボールタッチできない。しかし前半17分復活の狼煙はアシストの形でやってきた。1度伸二に預けたボールを受けてそれを中央へ流すと、走り込んできたペトロが豪快に蹴り込んで先制。次はいよいよ福田の復活弾かと思われたが、以降63分の交代まで福田は仕事らしい仕事はできなかった。

一方、J初ゴールを決めたペトロがこれでトップギアに入り、縦横無尽に走り回って平塚の中盤に仕事をさせず完全なレッズペースに。29分には相手のサイドチェンジしたボールを判断良くインターセプトした暢久が中央に切り込み、ゴール前にスルーパスを出すとチキがGKの股間を抜くビューティフルゴール。暢久が本領発揮を発揮したこのプレーは最もエクスタシーな瞬間だった。

その後、呂比須1人の踏張りでヒヤリとする場面もあったが、69分、75分とチキ、ペトロが確実に決めて勝負あり。80分にペトロが退場になったシーンでは「またか」といううんざりした感じで、再発防止のための指導の必要を感じたが、とにかく2nd開幕戦に快勝して早くもリーグトップにたった。次の磐田戦でどこまで自分達のサッカーを展開できるかがこのまま波に乗っていけるかどうかの鍵になるだろう。

(ここからさきは、福田が復活した浦和レッズが優勝するために攻撃陣をどうするかの考察である。)

さて、福田の復活ゲームとして大いに楽しめたこのゲームであったが、その復活がチームのバランスに影響を与えはしないかと心配にもなる。このゲームでのプレーを見る限り、福田の役目はスピードを活かしたチャンスメークではなく、攻撃の中継点としてのポスト役であった。彼にはもはや95年当時のようなキレがなくなってしまったのだろうか。もしそうであると仮定すると、福田・福永という2トップでは決定力のない攻撃陣とって、ますますチャンスが減るばかりなのではないだろうか。これまでの浦和のシュートシーンは、「大柴(あるいは岡野)が敵陣ゴールライン付近まで押し込んでスペースを獲得し、ゴール前に2列目のチキやペトロが飛び込む」パターンと、「福永、伸二のキープした状態からサイドバックのオーバーラップによるセンタリング、あるいはダイレクトに大柴へスルーパス」というパターンであると思われる。しかしここに福田がポストとして絡む場合には、1つ目のパターンのように敵陣のコーナー付近、深いところまでえぐってスペースを作る役割をする選手がいなくなる。2つ目のパターンでも福田と福永の役割がダブるようになって、スルーパスの選択肢が1つ減る。このゲームのように1トップに近い状態にすれば、このようなチャンスの形をますます作りづらくなるのではないか。たまたまチキ、ペトロといったワールドクラスの選手がうまく決めてくれたから点は取れたものの、いままでのように決定機ではずしまくるような状態であれば得点奪取の可能性はますます低くなるかもしれない。大柴が怪我から戻ってくれば、人材選びではうれしい悲鳴があがりそうだが、起用の際には組合わせと役割を十分明確にし、オジェックの時のような簡単な「決まり事」を事前に練習しておく必要があるだろう。またもし福田のポストプレーがきちんとはまるのであれば、福田・岡野という選択肢もないわけではない。

私が福田に望むプレーは、今日のような敵DFにピッタリつかれたところでボールをさばくようなものではない。95年に得点王を取ったときのように、ゴールエリアにトップスピードで突っ込んでいき、相手守備を寸断するプレーである。当面のところはスタメンであっても60分あたりにプレー時間を限定して、もっと積極的に前を向かせることが重要であろう。サブには日本代表の岡野が控えているわけだし。「福田に対する相手のファウル数」がひとつの指標となるだろう。前を向くプレーがそれ以上の時間できるようであれば、運動量の変動が激しいチキに変えて岡野を投入し福永をMFに下げることもできる。

もう1つ注文をつけるとすれば、石井俊也の役割。彼は今中盤の底として完全に守備の人の印象がある。現在の浦和の攻撃の起点は両サイドバックか、あるいはペトロが深く下がってくるかになっているが、石井はここにあまり絡むことはしていないようである。この結果サイドからの攻撃がメインとなっており、ダイレクトパスをつないでの中央突破というシーンは全くといっていいほど見られていない。浦和になかなか得点力がつかないのは、サイドからの崩しによる攻撃が多いからであり、相手守備はセンタリングに対するケアさえしておけば危険が少ないため守りやすくなっている。今は守りで精一杯という感のある石井ではあるが、本来の中盤の底としての役割を考え、攻撃の起点としてボールに多く絡むことができれば、他の攻撃陣がより敵陣に押し込んだ状態から仕掛けることができるようになり、相手守備にプレッシャーを与え、波状攻撃につなげることができるだろう。

ワールドカップを挟んで約3ヶ月ぶりの観戦。19時開始のところを13時30分に駒場入りした。並んでいる間は太陽の猛烈な照りつけにまいったが、試合前のアップが始まろうかというところで予報通り雨が降り始めた。雷鳴が轟く豪雨の中、試合は始まった。

立ち上がりから出足が悪く、トップが”ため”を作ることができず、チキ、ペトロのフォローはなく、両サイドバックの攻め上がりも見られない。反対にエウレルを中心とした川崎の早い攻めに何度「やられたっ」と頭を抱えたことか。しかしそのたびに守護神田北が当然のようにシュートを跳ね返していく。雨でスリッピーなピッチの状態にも関わらずである。前半のエウレルとの1対1、あるいは後半の前園のヘッドに対するセービングには「すげー」の声しかでない。やはりこのお方はただ者ではないのである。バックパスへの対処さえもう少し確実にできていれば、フランスで活躍してもおかしくなかったであろう。ピンチの時、名曲「雄気コール」をバックにおっさん臭い顔で凄まじい反応をみせる田北のプレーは間違いなくレッズ戦の醍醐味だ。

しかしその唯一の支え、田北の堅守もついには突破されてしまう。69分、それまで何度となく個人技で浦和DFを切り裂いてきたエウレルにゴールを許す。とうとうこの時が来たかと落胆していたが、レッズはここから急にエンジンがかかり始める。失点の前にそれまでほとんど機能していなかった大柴に変わってピッチに入った岡野が、まさに瞬発的な能力でサイドをかき回してボルテージを高めると、雨も弱まってきた77分、右サイドを自力で突破してのラインギリギリからのセンタリングが、つめていた伸二の頭にどんぴしゃりで同点。こちらはすでに代表で名をあげ、フランスへ行ってきたレッズの顔。その「これしかできない」という強烈なパフォーマンスに絶叫した。

この同点ゴール以降、猛烈な勢いで反撃するも逆転弾をたたき込むにはいたらず、延長突入。雨中戦での疲れとともに、ここで試合が一度切れてしまったことによって、浦和の出足は再びストップ。両チームともに試合を決めてやろうとする意気込みが感じられないまま勝負はPKにもつれる。チキが外し、岡野、暢久、伸康が歩み出たときには、だめだこりゃーと思わず笑ってしまったが、田北が川崎の「過去の人」2人を止めてくれたので何とか勝つことができた。

はっきりいって、浦和の攻撃には味がなかった。伸二の調子が今一つで、タイミングのずれと審判のあやふやな判定でペトロの集中力がみるみる切れていく様を見て、得点シーンはないだろうと思った。中央からの崩しの可能性はゼロ。頼みのサイド攻撃も、何を躊躇しているのか暢久は全然前に行こうとしてくれないし、川崎の上がりを押さえるのに精一杯。城定はスタンドの「あがれー」の怒声でようやっと上がっていく始末。これじゃあ、優勝できないのも仕方ないね。でも同点になるまでは、雨の中そんなニヒルな感じに包まれていたが、同点ゴール以降、5月9日以来のドラマと思われる試合展開は十分に楽しめた。楽しめればそれでいいや、という現実逃避をさせてくれたゲームだった。

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